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話題 2019.08.10

VRで視力回復やダイエット VRが人に与えた影響5選

 VRデバイスは私たちの心や身体に何らかの影響を与えています。ここ数年で、体重の変化や視力回復、悪夢治療など、さまざまなニュースが発表されるようになりました。この記事では、VRが人に与えた影響の中から印象深いものを5つピックアップします。

VRゲームはダイエットに効果的? 減量成功者が続々

 VRコンテンツの中には「Beat Saber」や「BOX VR」のように、激しく身体を動かすゲームがあります。ここ数年で、実際にVRゲームで遊んだ結果、ダイエットに成功した人たちが多く見られるようになりました。

中でも話題となったのは、2018年5月にVRダイエットで138ポンド(約62キロ)減量したロバート・ロング氏です。彼は交通事故で背中と首に大怪我を負い、ストレスから体重が急増していました。しかしロング氏はVRヘッドセット「HTC VIVE」を購入、2ヶ月にわたって1セット30分のプレイと食事のコントロールを続けた結果、大幅な減量を達成したそうです。彼がプレイしたのは人気リズムゲームの「Beat Saber」でした。ダイエット成功の秘訣は「よく動くこと」「音楽に心からのること」だそう。

「Beat Saber」を使ったダイエットに成功したのは彼だけではありません。Geoff Bowman氏の場合は、2018年11月から約6ヵ月で、約30ポンド(約14キロ)減量。Bowman氏によると、VRでのワークアウト以外には、飲酒などの生活習慣は変えなかったとのこと。ダイエットの後半には「Creed: Rise to Glory」や「Knockout League」といったVRボクシングゲームも使用して運動に励んでいたそうです。1日のプレイ時間は45分から60分程度(週5回)でした。他にも「スカイリムVR」で約4.5キロの減量や、自転車型コントローラー「VirZOOM」を使い、25キロほど痩せた例もあります。

VRとダイエットの組み合わせ自体に事業的な関心を向ける人もいます。VRで50ポンド(22kg)減量したJob Stauffer氏は、体験を元に「Orpheus Self-Care Entertainment」を立ち上げました。プレイヤーの健康を改善するVRゲームを取り扱っており、VRを通じて人々の健康管理をサポート。さらに、外部の研究者と協力し、VRがプレイヤーの身体に及ぼす影響や、最大消費カロリーといったデータを検証してゲーム開発に利用しています。

また、2016年8月から50日間のVRダイエットに挑戦したティム・ドナヘイ氏は「Thrill of the Fight」というボクシングゲームで、約6.8kgの減量に成功。彼もその経験をもとに、エクササイズに焦点を当てたVRコンテンツを開発する「ATG Studios」を設立しています。

VRが私たちの健康を支える上で重要なデバイスになる日も、そう遠くないでしょう。

VRヘッドセットで視力回復? 実際の体験者が語る

長時間のVRヘッドセット使用は、一見して視力に悪影響を与えるように思えます。しかし、2018年8月3日、VRヘッドセットを5ヶ月毎日続けて装着していたところ、視力が回復したという報告がTwitterに投稿されました。

当事者はVRアプリ「VRChat」を1日あたり5時間、140日にかけて約700時間プレイしていました。すると、VRをプレイする前の視力検査では左0.3、右0.5だった視力がプレイ後には1.0まで回復。今ではメガネなしで車を運転できるようになったそうです。

VRヘッドセットOculus Riftには、レンズを両目の距離に合わせられるIPD(瞳孔間距離)の調整機能が搭載されています。この視力回復に成功した人の場合、プレイ中は「裸眼の状態」「IPDは目一杯広げて」「暗めの画面」で遊んでいました。こうしたプレイ条件が視力に何らかの影響を与えたのかもしれません。ただし、現在のところ、彼のような例は非常に珍しいため、長時間のVR体験が誰にでも視力回復に効果があると考えるのは難しいでしょう。

 しかし、医療系VR企業「Vivid Vision」は、2017年に実施した視力回復実験で、VRは成人の弱視回復治療の方法になり得ると発表しています。実験では、17人の成人被験者(半数が立体感の認識に障害アリ)が、2ヶ月間にわたって約40分間のVRセッションを8回体験。実験後は、立体認識に障害を抱えていた被験者の90%以上が、立体認識力の向上を感じ、視力も回復したそうです。

また、2016年には“網膜色素変性症”の男性がVRヘッドセットで初めてクリアな視界を体験できたというニュースもありました。今後、研究が進めば、VRと視力の関わりはさらに判明してくるかもしれません。

VR技術で悪夢からおさらば! 睡眠中のストレスを軽減するという研究結果

米国では、不快な夢のせいで慢性的な睡眠不足やストレスを感じる“悪夢障害”に悩まされている人が数多く見られます。特に子どもたちの割合は全体の1/2から2/3を占めるほど。それにも関わらず、効果的な治療法はいまだ確立されていません。

しかし、2018年に米ボストン大学のPatrick McNamara教授とWesley J. Wildman教授らが、VRを用いた治療が患者に有効な結果をもたらすという調査結果を発表しました。

教授らが悪夢障害の治療として採用したのは「ReScript」というプログラム。患者にあえて悪夢のような映像をバーチャル空間で見せ、嫌なイメージを自発的に生み出さないように緩和させるというものです。患者の見た夢を悪いイメージから良いイメージに置き換えるよう指導する「イメージリハーサル療法(Imagery rehearsal therapy)」とVR技術を組み合わせた治療法といえます。

このプログラムを約1か月の間悪夢障害をもつ19名の参加者に対して行ったところ、悪夢に対する不安感やストレスが軽減されたとのこと。この研究結果から、日頃から最新テクノロジーに慣れ親しんでいる子どもたちにも効果が期待できると報告されています。現在、実用化はされていませんが、未来にはVR技術の力で夢のイメージまでコントロールできる日が来るかもしれません。

意識は遠のき、手足はしびれた…VR断頭台で体験した死の恐怖

VR空間では、自分が“死ぬ”という感覚も体験できるのでしょうか? 2018年10月、ソーシャルVRサービス「VRChat」の“VR断頭台(ギロチン)”が話題となりました。

実際に体験した人によれば、当初は冗談めかして笑っていたものの、一緒に参加していた友人たちの言葉から「死」を強く意識してしまったとのこと。VRであることを忘れ「死にたくない」と心の底から思ったと語っています。

いざ自分にめがめて刃が落ちてきた瞬間には、首元に強烈な感覚が走り、意識が遠くなってしまいます。30分ほどは頭がボーッとなり、全く動けない状態に。友人たちから声をかけられた後も、手足はしびれ、冷や汗が止まらなかったそうです。 氏は体験後、に「お試しでも絶対にやってほしくありません」とコメントしています。

VRがきっかけで結婚! バーチャル空間で挙式を挙げる

VRは私たちのコミュニケーション方法にも影響を与えています。特にオンラインアバターを介して多くの人たちと出会えるソーシャルVRでは、友人や恋人などの関係が生まれているケースも少なくありません。

ソーシャルVRアプリ「Rec Room」では2018年3月に、ワシントン州在住の女税とアラバマ州在住の男性が出会い、バーチャルとリアルの両方で結婚しました。2人はVR空間内で交流しているうちに、恋愛感情が芽生えたとのこと。現実世界で出会ってから2日後には婚約し、2人と司祭だけの結婚式を挙げています。

そして「Rec Room」の空間内でも結婚式を実施。結婚指輪やウェディングケーキ、ブーケなどを用意し、世界中から集まった友人たちの前で誓いのキスを交わしたそうです。

ちなみに、現実の結婚式でもVRの導入が進んでいます。2018年3月には、レストランウェディング・Duo DOMO(デュオドーモ)が、遠隔地からでもリアルタイムで結婚式に参加できる「VRライブ結婚式」を発表しました。式の様子を360度見回しながら、その場にいるかのような臨場感を得られます。

やがて、バーチャル空間での恋愛も普通になり、結婚式のような祝いの席の在り方も大きく変わってくるでしょう。

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