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VRChat 2024.06.20

体感したことのないレベルの至近距離! Victor発のVRChat音楽ライブ「MAGICAL JUKE BOX」レポ

オーディオ機器でおなじみのJVCケンウッドが主催するバーチャル音楽フェス「MAGICAL JUKE BOX」。8組のシンガー&バーチャルアーティストが出演する新感覚バーチャルライブが、VRChatの特設ワールドで2024年6月に3日間の日程で開催されています。

ライブでは「香美2号ちゃん」として広瀬香美さんが出演するほか、朝ノ瑠璃さんやMaiRさん、おめがシスターズ with ほんわかバンドといったVTuber/VSingerも登場。ライブの様子はVRChatの現地会場だけでなく、SPWNの配信でスマートフォンからでも楽しむこともできます。

開催日程は、2024年6月15日・23日・30日の3日間。本記事では、その初回公演となる15日のライブの様子をお届けします。

Victorのトレードマーク「Nipperくん」&「DJ Mark」がお出迎え

今回のバーチャルライブが行われるのは、VRChatの特設ワールド「JVC ケンウッド MJB バーチャルワールド」。

ライブ開催に先駆けて6月7日に公開されたワールドですが、ただのライブ会場ではありません。蓄音器をはじめとする懐かしの音楽機器の展示や「音」にまつわるゲームやギミックなどを楽しむことができ、ライブ当日以外でもフレンドと遊べる空間となっています。

ライブ会場となるのは、このワールドの「音楽喫茶」の中からワープした先の特設ステージ。こちらの見上げるほどの巨大なジュークボックスから、ライブステージへと移動します。

ちなみに、ライブ中はジュークボックス横のモニターで会場の様子を中継していて、チケットを持っていない人でも無料でライブを視聴できるそう。せっかくなら現地会場で見たいところではありますが、「有料ライブをVR空間の画面越しに見られる」という体験もなかなかに新鮮に感じられるのではないでしょうか。

さて、ライブの開催時間になると聞こえてきたのは、観客へと呼びかける誰かの声――と、犬の鳴き声。

声のするほうへと向かってみると、そこにいたのは、喋る蓄音機・DJ Mark(CV.鳥海浩輔)と犬のNipperくん。Victorのブランドマーク(※)で知られる2人(?)が、どうやら今回のライブの案内人となってくれるようです。

(※Victorのトレードマークとして描かれている犬、ニッパーが蓄音機に耳を傾けて聴いているのは、亡くなったご主人の声なのだそう。ライブの導入パートではその逸話に加えて、この「MAGICAL JUKE BOX」の世界における2人の立ち位置が語られます。詳しくはこちら

そこへ登場したのが、広瀬香美さん(香美2号ちゃん)。今回のライブではゲストMCを務めるほか、もちろんアーティストとしても出演。さらに、ライブのテーマソングとして新曲「Hello You, Hello me」を書き下ろしてくれています。

さあ、ライブを進行する3人が揃ったところで、いよいよ本編が始まります。

広瀬香美さんがボタンを押すと、巨大なジュークボックスが起動! ワープ演出が目の前で展開され、次の瞬間にはライブ会場に立っていました。間髪を入れず、1人目のパフォーマンスが始まります。

体感1~2mで目撃する音楽ライブ

まず驚かされたのは、根間ういさんのステージ。真っ暗な空間にぽつんと立った状態で始まったかと思いきや、歌い始めると同時に広がる青い空と青い海! 透明度の高い沖縄の海を思わせるステージで元気いっぱいに歌って踊る根間ういさんの姿を、S席では間近で目にすることができます。

この「S席」の近さは特設ワールドで事前に体験していたのですが、改めてその超至近距離っぷりに圧倒されました。体感で1〜2mといったところでしょうか。現実世界のライブを基準にすると常識外れのレベルで近づけてしまうため、かえって遠慮して後ずさりしてしまうほどでした。





泡に包まれて水中へ移動したり、青空が夕暮れに変化したり、観客側が水上を滑るように移動するような演出が入ったりと、歌と音楽にあわせて目まぐるしく移り変わるライブステージ。「アーティストを間近で見てもいいし、ちょっと離れたところから空間演出も含めて楽しんでもいい」という、このライブの楽しみ方を自然と観客に伝えてくれるステージで、「このライブ、ただのVRライブじゃないぞ!」というワクワク感がありました。

MaiRさんは遺跡のようなステージを、リラックスした様子で歩き回りながら歌います。空間に浮かぶ歌詞演出などは控えめですが、サビのタイミングで切り替わるライトや空の色が、彼女の歌声を盛り立てます。むしろシンプルな表現によって歌声を際立たせることを狙っているような、そんな印象すら受けました。




かと思えば、ラスサビでは幾重にも重なった光の線が空中に展開され、背景もMaiRさんにこそ似合う満天の星空に。時計の音にあわせて足元の時計の針が動く演出もあり、細部までこだわりを感じるステージでした。

ただ、あまりにも自由にのびのびと動き回りながら歌うMaiRさんの動きをカメラで捉えるのが難しかったので、第2回公演ではリベンジしたいところ……!

銀河アリスさんと言えばダンスが魅力ですが、今回のライブでも期待通りのキレッキレの動きで魅せてくれました。彼女の「宇宙」の要素を取り入れたシンプルなステージで、あのダンスパフォーマンスを超至近距離で堪能できる。こんな機会、そうそうありません。





ここまで間近で見られるとなると、やはり迫力が違います。キックするような動作を超至近距離で繰り出されたときは、本当に蹴られるんじゃないかと感じて、思わずビクッとしてしまうほどでした。

MVの世界観をバーチャル空間でそのまま再現したかのような表現

空間が暗転した次の瞬間、最初に目に入ったのがこの光景。おめがシスターズ with ほんわかバンドの登場です。生首が宙に浮かび、プレゼントボックスが弾けてステージへ。 とてもおめシスらしい導入ですね。







パフォーマンス中はずっと、目が離せませんでした。巨大なうんちゃんが降り注いできたり、気がつくと巨大化したレイちゃんの手のひらの上にいたり、溶岩へと落下したり、某カードゲームのような召喚陣が浮かび上がってきたり……。

VR状の演出のひとつひとつが、おめシスらしい世界観をイメージしたものとなっており、彼女たちの世界に強引に引きずり込まれているかのような体感がありました。まさか“あのマグマ”をVR空間で堪能できるとは思いませんでしたし、ファン必見の、最強最低最高におめシスらしいステージだったのではないでしょうか。

朝ノ瑠璃さんのステージで特に気になったのは「ミュージックビデオ」を舞台に再現したかのような演出でした。





場面ごとに複数のステージへとシームレスに移行し、そのどれもがMVで見覚えのある場所ばかり。音楽に呼応するように明滅する光の演出も美しく、独特すぎるおめシスワールドとはまた違った意味で、空間を丸ごと使った楽曲の作品世界が展開されていました。

言うなればそれは、VRライブであると同時に、空間MVでもあるような。ライブ中は自然と真正面から見てしまっていましたが、せっかくの「MVに入れる」機会だと考えると、いろいろな角度から見ても楽しめそうです。







広瀬香美さんはMCとして立っていた空間から、ダンサーのタイガさんと共に移動式のステージで街とライブ会場を飛び回ります。突如として巨大化するなどバーチャルならではの演出が盛りだくさんでしたが、間奏では慣れた様子で繰り返し観客に呼びかけていて、リアルさながらの「音楽ライブ」としての雰囲気も漂うアツいステージでした。

VRライブの「近さ」を更新する、超至近距離でのライブ体験



9人のアーティストによる計7曲のパフォーマンスを約1時間の尺で楽しめた、今回の「MAGICAL JUKE BOX」。全体曲を除けば1人1曲のステージではありましたが、出演者&楽曲ごとに異なる特別な空間演出が用意されているなど、期待以上のVR音楽ライブでした。

先ほども軽く触れましたが、アーティストあるいは楽曲の世界観を反映した各ステージは、「音楽ライブ」であると同時に、「ミュージックビデオ」的な要素も多分に含んでいたように思います。ライブ中はマイクミュート、かつ透明アバターでの参加が前提となっていた点も、VRMV的な空間と、そこで展開される演出への没入度をより高めていました。

また、本イベントならではの要素として特筆すべきは、やはり「S席」の存在ですね。


https://vrw.jvckenwood.com/mjb/ticketより)

企業主催のバーチャルライブは過去にもVRChatでたびたび開催されており、その多くが演者の間近でライブを見ることができましたが、それらを上回るほどの至近距離。文字通りの「ガチ恋距離」でアーティストのパフォーマンスを見られる体験は、(企業主催のバーチャルライブとしては)過去にもほとんど前例がないのではないでしょうか。

そもそもVRを舞台とする音楽ライブにおいて、「指定席」のような概念はあまり目にすることがありません。ライブ中は比較的自由に動き回れますし、現実世界とは違って他人とぶつかることもない。まったく同じ立ち位置でアバター同士が重なり合うことすらできる(あるいは周囲の観客をフィルターで消すこともできる)VRでは、わざわざ「座席」を設ける必要性がありませんでした。

なので、今回の「MAGICAL JUKE BOX」の詳細が発表された当初は、「S席」と「A席」の概念があることを不思議に感じていました。

「アリーナ席(最前列)」と「スタンド席」をワープで行き来できるVARKのような事例もありますが、この場合は「どちらにも行ける」という選択可能なシステムであり、チケット料金は変わりません。空間の制約が薄いVRにおいて、わざわざ現実世界のライブ会場の座席のように「ランク」を設けている今回のイベントは、かなり珍しいように思います。

そのような珍しさもあり、当初は不思議に思っていたS席の存在。ですが、実際にライブを体験した今となっては、「そりゃあ分かれていてもおかしくないよね」と感じています。もちろん、VARKのようにチケットは一律料金にして、近くからでも遠くからでも自由な位置でライブを見られるようにしても良いとは思います。思う……のですが。

そうするには、今回のライブの「最前列」は、いくらなんでも近すぎました。





これまでのVRライブでも十分に「近い」と感じていた演者との距離が、まさか企業主催のライブで、さらに更新されることになるとは思わなかった。そんなレベルの至近距離であり、それが過去にもあまり体験したことのない「特別」なものとして実感できるステージだったのです。

しかも「S席」だからと言って割高というわけでもなく、あれだけ特別な体験ができて3,000円ぽっきり。A席が破格の1,000円なので、むしろS席のほうが通常料金と言えるかもしれません。いや、3,000円であれだけの満足感を得られて、しかも3回見られると考えると、S席すら安く感じます。忖度なく。

料金を考慮するのであれば、普通に「近くからも遠くからも見られるチケット」を一律3,000円で販売するのではなく、「格安のA席」と「特別なS席」を選択肢として用意することで、相対的にS席の特別感を演出している。そのように捉えることもできるかもしれません。

そのうえで、S席を選ぶことで得られる特別な体験は、ここまでに繰り返してきたとおりです。超至近距離でのライブ体験。特に自分の推しが出演している人は、VR機器を準備してでも(購入orレンタル)本気で体験する価値のあるライブだと言えます。飛ぶぞ。

MAGICAL JUKE BOXの公演は、残すところあと2回。6月23日と30日にまた、特設ステージへの道が開かれます。ぜひこの機会をお見逃しなく!


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