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VRChat 2024.06.07

神椿のVRChat音楽ライブに見た新たな挑戦 「空想劇」を体験したVRChat好きのVTuberが語る

こんにちは! 企画動画VTuberのレオン・ゼロミヤといいます。

この度、KAMITSUBAKI STUDIOが運営するPHENOMENON RECORD所属のバーチャルシンガーCIELによるVRChatでのワンマンライブ「空想劇-神椿市伍番街-」に参加してきました。
当日のVRChat会場での様子をお届けしたいと思います!

CIELちゃん(以降いつものこの呼び方にします!)は昨年11月にも実験的にVRChatでのトライアルライブを行っていて、無料で2曲のパフォーマンスを楽しむことができたのですが、その時からすでに400人が同じ1つの場所に集えるライブシステムや美しい演出なども話題になっていました。(僕もJOIN戦争に打ち勝ち参加してきました……!)

今回は満を持して有料でのVRワンマンライブということで、VRChatで観賞できる400枚限定の先着順チケットと、配信視聴のチケットがどちらも3,000円で販売されており、すぐにVRChatでのチケットは売り切れるなど、注目度の高いライブでした。

越境型フィメールシンガーとしてKAMITSUBAKI STUDIOの中でも存在感を発揮し、リアルとバーチャルを行き来しているCIELちゃん。一体今回のライブはどんなパフォーマンスなのか、期待が高まります!

当日、開場時間ぴったりにVRChatの会場へJOINすると、前回と同じ海辺の会場が。ここは神椿市伍番街にある港にある施設内につくった特設ステージなんだそうです。

早速専用アバターに着替えて会場前へ。相変わらず建物のモデルのディティールが細かい……! この無骨な工場ルックがたまらない!!

すでにスタッフの方が配置されており、しゃぼん玉に触ると音を立てて割れることを教えてもらいました。すごい!すでにちょっと楽しい!!

徐々に他の人も入り始め、いざライブ会場内へ! こちらも前回と同じく海と空が開けて見える開放的なステージです。ステージの向こう側には美しい夕焼けが広がり、静けさの中に風の音が響くなか、たくさんの観客たちがひしめきあっています。

自分の身長や体格、他の人との距離を気にせずに楽しめるのもVRライブの利点かもしれません。

 

VRChatのインスタンス上限は80人ですが、他インスタンスの観客たちの動きを同期させることで、400人が集合しているように見えるという、前回も話題になっていた謎技術。VRの快適さとリアルの人が集まったお祭り感、どちらも味わえる仕様なのが素晴らしいです。

CIELちゃんとのコラボ配信も行っていたKAMITSUBAKI STUDIO所属の幸祜ちゃんによる前説に沸き立ち、ライブの開始をわさわさと待つ観客。

会場に鐘の音がなり響き、ついに開演! KAMITSUBAKI STUDIOライブお決まりの壮大美麗ムービーからはじまります!

1曲目の『馥郁の街』が流れ出すと同時に、ステージ上に立つCIELちゃんをライトが照らし出しました。

わ~~ライブだ!!めっちゃライブの没入感!!

アップテンポな曲に合わせて次々とライトが切り替わり、花の形の光るエフェクトが舞い、CIELちゃんも「今日は一緒に盛り上がっていきましょう!」とノリノリにパフォーマンスを盛り上げていきます。

なんといってもいつも画面やスクリーン越しだったCIELちゃんがすぐ目の前にいるという実在感! これはバーチャルシンガーのVRライブならではの感動ですね。ステージ上の大きなモニターによってCIELちゃんの繊細な表情もしっかりと見ることができます。

廃墟のような野外の空間で照明をバリバリ使うライブというのも、現実ではなかなかできない空間演出です。アーティストの世界観を存分に表現した空間でライブが楽しめるのもバーチャルの好きなところですね。

観客のアバターが自動制御ペンライトのように、音楽に合わせて色を変えながら光るという演出も、おそろいのアバターで楽しむ今回のVRライブならではの試みになっています。(ライブ会場に入る前に専用のアバターに着替えることが指定されています)

これによって他の観客との一体感や、自分も音楽の一部になったような不思議な間隔が楽しめました。観客も舞台装置にするという発想は面白いですよね。

1曲目が終わりMCパートへ。お水タイムの応援に照れたように笑い、ハッシュタグを言う際に見事な噛み椿を披露(可愛い……)。「1階席のみなさ〜ん!」とコール&レスポンスをしてくれるCIELちゃんに、観客たちも精いっぱい手を振り応えます。この配信では味わえない距離の近い触れ合いも楽しいです。

続いての2曲目は『空より』。ここまでのセトリはショーケースライブと同じですが、巨大なしゃぼん玉が現れ、曲に合わせて割れる度に空の色が変わっていくという演出がお気に入りです!

夜空から早朝のような眩しい空になるとステージの雰囲気も一変。太陽の逆光やしゃぼん玉など、また一味違う美しさが堪能できます。(会場内に舞うしゃぼん玉が弾ける音が音楽の一部になる演出も楽しい!)

そしてこの曲の演出の見どころと言えば…ステージが飛ぶ!!!!

一番のサビ直前になると視界が揺れ、文字通りステージが観客の座席ごとぐーーーーんと空高く飛び上がっていくのです。

楽しい~!!!! 曲と相まって爽快感と開放感がすごい~~!!

そう、地面に設置したステージで歌わなきゃいけないなんてルールはないんです。
だってここはバーチャルだから!!!!!

CIELちゃんといえば美しい空色。夜から朝へ、朝焼けへと、次々と表情を変えるこの空の演出はぴったりでした。ステージ上を浮かぶしゃぼん玉に囲まれながら歌うCIELちゃんもどう切り取っても美しい……!

最後のサビでは壮大な夕焼けの空を彼方に向かってステージがビュンビュンと飛んでいくのですが、歌詞の通りどこへでもゆけそうな気持ちになれてとても良かったです! シンプルにVR体験としてもクオリティの高さを楽しめます。

さてショーケースライブで披露した1曲目と2曲目も終わり、ここからは今回のライブで初お披露目となるパートです。

「皆さんを自分の心の中の世界へご案内します」というCIELちゃん。

え~どこどこ~?? などと思っていたら急に目の前が真っ白になり……

なんか全然知らない空間にいました。

ここどこ……???

しかもさっきまでいた大勢の観客たちもいなくなっており、10人程度しかいない小さな空間に転移しています。(あとから知りましたが人数は空間ごとに違ったらしく、僕はたまたま少人数の空間だったようです)

混乱して動き回る観客たちの耳に突如響き渡る3曲目の『法螺話』。KAMITSUBAKI STUDIO所属のシンガー理芽の曲のカバーです。

真っ暗な空に浮かぶ、鳥籠のような、石でできた祭壇のようなステージ。その中心に大きな花々に囲まれてたたずむCIELちゃん。

近い! 観客側との高低差がほとんどないせいかCIELちゃんがめちゃくちゃ近く感じます
本当にCIELちゃんの心の中にお邪魔したような感覚でした。



暗闇の中で音に合わせて花々が色とりどりに優しく光る演出がアンニュイな魅力を持つ曲とぴったり。CIELちゃん自体も内側からぼんやり発光しており、音に呼応するように光の色が変わるなど、歌手含めた建物全体を照明として使う空間演出が斬新でした。

右手だけを柔らかく発光させる演出も新鮮で、本当に美しく幻想的な時間。最初は戸惑っていた観客たちもうっとりしながら聴きいっています……。


と思いきや4曲目の『眼裏の懐疑』

「照らしてんなよ 好奇なんかさ」

バリーーーーン!!!

CIELちゃんが歌い出し腕を振り払った瞬間、

雷が落ちたように空間がバリッバリに割れました!!!!

びっくり!!!!

確かにこの曲はCIELちゃんのナンバーの中でもダークで激しく、一気に雰囲気が変わる曲です。いつのまにか頭上からは雨が降り注ぎ、ガラスの破片が空間に浮いたまま、音に合わせて激しく切り替わる照明の光を眩しいほどに反射しています。雨粒やガラスの反射を通して見えるCIELちゃんのシリアスな表情。曲の速いテンポに合わせて鼓動するようにガラスが光り、無重力のように空間の中を舞い上がる。

いやいや情報量が多すぎる…!!

展開の多さに目がついてきません。感情を込めて歌うCIELちゃんに合わせて何度もガラスが割れ、宙に浮かび、荒々しい雷と雨が振り出す。その姿はさながら空を操る魔女のようでした。そして僕ら観客はその中を右往左往することしかできない…!

VRライブは色々と見てきたつもりですが、こんなに一度に反射や光の表現を詰め込んだライブは初めてでした。技術に関しては素人ですがそれでも「処理とかどうなってるんだ…??」と頭をひねってしまうほどの演出量です。だって割れたガラスの1つ1つにCIELちゃんや風景が反射で映っているのです。恐ろしい……。

これがMVのスクショではなくVRライブでリアルタイムに撮影した画像なの信じられなくないですか……?

そこからまさかの空間転移がもう一度!5曲目『少年漫画』では、たくさんのブロックでできた巨大なステージのような舞台にCIELちゃんが降り立ちます。スポットライトが綺麗!


頭上に浮かぶ巨大なリングライトや空間に組み込まれた幾何学体の図形など、空間全体が曲に呼応してバラバラに光ったり、CIELちゃんの幻影のような光が現れてステージ上を自由自在に飛び回ったりと、またなかなかに複雑な演出。

自由すぎる…!!これが『空想劇』…!

自由に空間を設計できるVRライブでも、やはりショー体験としてステージ的なものを用意するのが定番。
その一方でここまで空間全体を壊し、曲の世界観を表す空間の中に観客ごと放り込むような演出はなかなかないと感じます。ステージと観客席を分け切らず、歌手も観客も舞台装置の1つとして使うような演出は、VRの没入感を存分に生かしている演出とも言えます。

圧倒的な没入感を味わわされたまま、最後の空間転移へ。(床がブロックのように沈み込んでいくのはちょっと面白かった)

再び会場に戻ると、初めとは違う座席に! 席が変わるとまた違った見え方になるのでいいですね。

「残るは2曲となります!」というCIELちゃんのMCに手を振って盛り上がる観客たち。ファン待望のファーストアルバムの発売も発表され、無言のままながらさらに会場全体が沸き立ちました。その様子を見て嬉しそうにお礼を言うCIELちゃん。

そこで「もう一つ大切なご報告があります」と前置いた上で発表されたのは、まさかの活動休止のお知らせ……!

これからのことも考えて、心も体を休ませるための決断であることがCIELちゃんの口から語られました。突然のお知らせとに先ほどとは打って変わって(動きの反応が)静まり返る会場。着実に活動を積み上げていく姿を応援し、これからの活躍を楽しみにしていた人も多い中、戸惑いが浮かびます。

そんななか「みなさん最後まで一緒に楽しんでくれますか?」と元気づけるようにCIELちゃんが呼びかけると、再び腕を上げたりジャンプしたりと、必死に反応を返す観客たち。言葉はなくともCIELちゃんのライブを最後まで応援したい!という気持ちがアバターの動きからもにじみ出ていました。

その様子を見て「最後まで思いっきり全力で皆さんと一緒に駆け抜けます!」と宣言するCIELちゃん。そこから始まった6曲目はデビュー曲である『窓を開けて』

音楽に呼応するように光の粒がステージから空中へ舞い上がり、ライトも一気に光り出します。流れ星のように縦横無尽に飛びだしていく光が、のびのびとしたCIELちゃんの歌声にもぴったり。

爽やかに明るく「大丈夫」と歌い上げてくれるCIELちゃんをさらに盛り上げるように拍手に合わせて光のエフェクトが飛び、たくさんのライトや光の粒がライブを彩ります。

曲の終盤にはCIELちゃんからの「ありがとう〜!!」と同時に銀テープも発射!! まさかのサプライズ演出に会場内のテンションも最高潮に。

この銀テープ、現実のライブと同じような動きで発射されて舞い落ちていくし、さらに一瞬のエフェクトではなく歌い終わった後もちゃんと会場の地面に落ちてるんです!

しかもしかも、ちゃんと銀テープに今回のライブ名が印刷されてるんです!!!

なんだこのつくりこみ!ライブすぎる(?)!!!!

6曲目も終わりいよいよ最後の曲へ。「ちょっと力を込めすぎました」とはにかみつつ(可愛い…)、お水タイムを挟んだ後、2021年のデビューからの軌跡を振り返るCIELちゃん。

あたたかく見守ってもらい、色々な活動ができたことに感謝しながら、これまでに歌に込めてきた想いや活動休止に至るまでのことについて語ります。CIELとして出会い、歌い、愛してもらえたことは本当に幸せだったと会場のファンに伝え、「愛をくれた全ての皆さんに感謝と自分の気持ちの全てを込めて歌います」と最後の曲に繋ぎました。

7曲目は『君の望み、君の願い』。大切な人を想う強い気持ちが込められた、最後の1曲にふさわしいナンバーです。

CIELちゃんの儚く透き通るような歌声に合わせて、花びらのような白い光がはらはらと集まり、会場一帯を包み込むように舞い上がります。軌跡を描きながら飛び立っていくたくさんのあたたかな光には、CIELちゃんの想いが込められているように感じました。

力強く切ない、美しい歌声にあわせて、やがて会場全体が流れ星のような光に包まれていったのですが、ちょっとこれはもう泣くしかない……。

曲に込められた気持ちがダイレクトに空間に光として表現されているような…痛いほどに歌が響くと言いますか…この現実では見ることのできない魔法のような光景には心を打たれました。


最後のサビに差し掛かるとなんと……

CIELちゃんの足元から美しい空色の花がステージから溢れんばかりに咲き出しました……!!

空も夜から朝焼けへとゆっくり移り変わり、たくさんの光に包まれながら曲のクライマックスを迎え、会場は感動の渦に飲み込まれます。

一面の花の中で夜明けの光を浴びながら歌い、観客たちに手を振るCIELちゃん。

精一杯手を振り返し、休止前の最後の姿を目に焼き付けようとする観客たち。

それはひたすらに美しい、幸福な別れの風景でした。

「またいつかきっとお会いしましょう」「本当にありがとう」
笑顔でお礼を述べ、観客一人ひとりに最後の瞬間まで笑顔で手を振り続けていたCIELちゃんは、幻のような光に包まれてステージを後にしました。(なんかもう本当に、幻想的すぎてこの1時間全部夢だったのかなみたいな気分になりました……!)



エンドロールが流れ出し告知タイムが終わった後も、会場はあたたかな余韻に包まれていました。

終演後も会場に残る観客たち。僕もつい残ってしまいましたが、この美しい風景を忘れたくない。そんな心の声が他の方々からも聞こえてきそうでした……うう……。

一旦気持ちを落ち着かせまして……。

改めてライブ全体を振り返ってみると、今回もやはりVRChatでのライブとしていくつもの思い出に残る点がありました。

まずは400人を同じ会場に入れるという大人数でのライブ体験システム! こちらは前回も驚きましたが、やはりたくさんの人と一体となって楽しむライブならではの高揚感や満足感がありました。

また、ライブ中にステージが空を飛ぶ、観客たちが全く違う空間へ転移する、観客のアバターを自動制御で光らせ舞台装置の一部にする、といった演出もバーチャルならではの新しい体験だったと思います。いっそ曲の世界の中に観客ごと放り込んじゃおう!くらいの気概で作られている体験が多くてとても楽しかったです。

音楽の演出として空間全体を使っていたのも面白かったですし、ステージと観客を隔てすぎないような演出にはさらに没入感を覚えました。少人数で見るパートがあったのも、他のVRライブではあまりない体験でよかったと思います!

一方で、数々のスポットライトや銀テープなど、現実のライブならではの演出方法もリアルな形で取り入れられており、バーチャルの良さを最大限引き出しつつ、現実のライブが好きな人も楽しめるポイントのある体験だったと感じました!(銀テープのデータを配布していたのもニッチですが面白いですよね。)

演者と観客のコール&レスポンスなど、距離の近い身体を使った交流がバーチャルシンガーとできるのも、映像配信ではないVRライブの魅力だと思います。

何より光や空の演出が本当に美しかったです……!! 夜明け、朝、夕方、夜といろんな表情を見せてくれましたがどの空も本当に綺麗で……。

光もステージのライトだけではなく、光の粒だったり線だったり、しゃぼん玉だったり、建物や演者を光らせてみたり、と思ったらガラスを割ってみて反射させたり……7曲全て違う表現に挑戦していてどれもめちゃめちゃ美しかったです!!

企画演出、制作全般はEallin Japan / MIGIRIさんが担当されたとのことでしたが(最近めっちゃ気になってます)、これからもどんな表現を見せていただけるのかワクワクしますね!

KAMITSUBAKI STUDIOには今後もVRChat含むVRでの取り組みにも期待したいです。VR界隈とVTuber(Vシンガー)界隈って似ているようで意外と断絶されているので、色んな人の懸け橋になってほしいというか、どんどん神椿ならではの尖った表現にも挑戦しているのを見たいですし、VR自体は今後もゲーム発売が予定されていたかと思うので期待したいですね!

よかったらVRChatでもファンミーティングとかしませんか……??(突然の私情of私情)

最後に。CIELちゃんにはゆっくりと休んでほしいですし、またいつか元気な姿で歌が聴けると嬉しいです……! 映画タイアップに大抜擢という鮮烈なデビューから始まり、この3年間様々な姿を見せてくれました。

今回のVRChatのライブは、越境型という活動形態にもぴったりなものでしたし、何よりCIELちゃんの歌の美しさを、現実の制約にとらわれずに存分に表現していたものだと感じました。

またCIELちゃんらしい歌や世界を、バーチャルでもリアルでも見られることを願っています!


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