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企業動向 2024.07.04

MRヘッドセット「Lynx R-1」、追加ユニットを2024年夏に出荷。CEOが赤裸々に語る「苦難の年」

フランスのスタートアップ企業Lynxは、MR(Mixed Reality, 複合現実)ヘッドセット「Lynx R-1」の追加ユニットの出荷を発表しました。2024年7月から8月にかけて、約400台の生産検証試験用デバイスを、Kickstarterの投資者に向けて発送する予定です。

これに合わせ、Lynx CEOのStan Larroque氏は、2023年が「苦難の年」であった旨を投稿。ほぼ確定していた投資の破談や製造における困難などを語っています。


(画像: Lynx)

数々の苦難を乗り越え、ようやく「追加の出荷」に到達

「Lynx R-1」は2019年に発表された、VRとMRを切り替えられる一体型ヘッドセットです。Appleの「Vision Pro」や「Meta Quest Pro」などに先駆けて「フルカラーのパススルーMR、かつ一体型、ハンドトラッキング搭載」を実現しており、開発者やクリエイターから注目を集めていました。

当初は2020年夏の製品発売を目指していましたが、デザイン変更や機能の調整、ソフトウェア改善、価格改定などを経て、2023年秋に出荷を開始しています。しかし出荷台数は非常に限られており、すべての購入希望者の手に届かない状況が続いていました。


(一体型MRヘッドセット「Lynx R-1」。画像: Lynx)

7月2日、Lynx CEOであるStan Larroque氏は、Kickstarterへの投稿で「2023年は多くの財務的な制約に直面していました。(…)私たちは資金の調達に尽力しましたが、成果は得られませんでした。あまりにも数が多すぎてリストアップしきれませんが、3,000万ユーロ(約52億円、2024年7月4日時点)の調達が、実は投資家が資金を持っていなかったことで破談になり、大打撃を受けました。またフランスの公的ファンドは、6ヶ月かけた1,500万ユーロ(約26億円)の調達を白紙にしました」とコメント。その苦労が赤裸々に語られています。

そのうえでStan氏は「現在は財務面において米国のパートナーと協力し、前向きに進んでいる」と語り、「10,000台以上の医療や防衛、産業用途での注文がある」ことも明らかにしています。

なお、現在のLynxは自社OSの開発にも力を入れており、様々なアプリ向けに共通のシステムUIを提供する試みや、XRコンテンツのストリーミング・録画用パイプラインを開発中であるほか、ハンドトラッキングシステムの改善、開発者向けカメラアクセス、独自のVRコントローラー製造、Discord経由で新たなエンジニアやインターンスタッフが加入したことなど、ポジティブな情報も明らかにしました。

(参考)Kickstarter


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