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VRゲーム・アプリ 2024.07.10

「8番出口」のVR版は何が変わったのか? 開発を手掛けたMyDearest担当者インタビュー

MetaQuestシリーズにてVRゲーム化することが電撃的に発表された「8番出口」。PC版の時点で反響が大きく、ゲーム実況などでも話題となったタイトルであり、VR化の発表の際も驚きの声が挙がりました。

渋谷でのMeta Quest 3体験イベント「四畳半MIYASHITA PARK by Meta Quest 3」で先行公開され、今最も期待されているVRタイトルと言っても過言ではない本作。今回は開発をしたMyDearestのパブリッシング部門担当者とVR開発担当者2名にインタビューを実施し、本作の経緯や見どころを語っていただきました。


Matthieu YOUNA(ユナ・マチュー)
2012年から2020年までグリーやKLabなどのゲーム企業で海外展開を担当。2020年から2022年までFacebookのFacebook Gamingチームに所属し、日本のゲーム企業のパートナーマネージャーとして活動。2023年1月にMyDearestに入社し、パブリッシング部門を立ち上げた。『8番出口VR』でパブリッシングを担当。なお「人生最高のゲームはスーパーファミコン版の『ファイナルファンタジーⅥ』」とのこと。


下嶋健司
MyDearest所属のリードボードゲーマー兼プログラマー。会社の人のOculus Rift DK1を借りてVR制作を始める。2018年にMyDearestに入社後、『東京クロノス』『アルトデウス: BC』『ディスクロニア: CA』にプログラマーとして参加し、『8番出口VR』でプログラマーを担当。

――そもそも、なぜMyDearestが、非常に人気の高い「8番出口」のVR化に携わることになったのか、経緯をお聞かせください。

ユナ・マチュー:
もともと、コタケクリエイトさんが、ゲームのVR化について興味をお持ちだったのですが、続編の制作などで忙しく、VR経験のあるスタジオを探されていました。そんななかで弊社とご縁があり、お互いに連携しながら開発を行っていくこととなりました。

――事前にどういった内容の打ち合わせを実施したのでしょうか?

ユナ・マチュー:
コタケクリエイトさんは、「出来る限り、従来の『8番出口』をそのままVR体験できるように移植したい」とお考えでした。我々の側も、以前から今作についてリスペクトしていましたし、そのままVR化した方が内容としても良いものになると考えていました。そのため、話し合い自体はとてもスムーズかつスピーディーに進みました。

下嶋健司:
もともと社内でも「このゲームはVR向けだよね」という話は出ていましたね。実際に開発してみて、あらためて「その通りだな」と感じました。

――MyDearest側も原作の持ち味をそのまま活かそうと考えていたわけですね。

ユナ・マチュー:
そうですね。もちろん先方には「VR化するのであれば、こういったこともできますよ」と、色々な可能性を見せるといったこともありましたが、ゲームの本質的な魅力はそのままにするといった点に変わりはありませんでした。

原作に忠実にしつつ、VRならではの体験を追加

――逆に、今回のVR化で大きく変わったポイントは、どういったところでしょうか?

ユナ・マチュー:
プレイヤーの手の表示ですね。これによって、壁に手を沿わせながら、おそるおそる先の道をのぞき見るといった動作も表現できますね。また、すでにプレイされた方なら気づけるとは思いますが、VRでしか体験できない面白い要素も追加されていますね。

下嶋健司:
具体的に、どこがどう変更されたり追加されたりしたのかについては、さすがにネタばれになるので、ここではお答えできません(笑)。

――実際に先行体験版をプレイさせていただいて気づいたこととして、PC版よりも没入感が高いために、異変探しに集中しやすかった印象です。開発者視点では、VR化したことで、原作の魅力がより増したと感じるポイントはありますか?

下嶋健司:
もしかすると、VR化するにあたって最も大きく変更されたのは、“効果音”かもしれません。実際に体験していただくと分かるのですが、音の素材自体はそのままに、空間の中での反響の仕方については、より細かく調整しています。これにより、プレイヤーやおじさんの足音の響き方などは、より臨場感のあるものになっていると思います。

――そもそもの話として、今回のゲームのVR化の作業自体は、スムーズに移植できるようなものだったのでしょうか?

下嶋健司:
「8番出口」はUnreal Engine製のゲームですが、デスクトップ向けに開発されていたため、スタンドアローンのVR機器であるMeta Questシリーズで遊べるようにするには、細かな作業が諸々必要という点で、決して簡単なものではなかったと思います(笑)。

ーー今回の件に限らず「VR化に向いているゲーム」というのは、どのような条件があるのでしょうか?

下嶋健司:
基本的には、主観視点かつ、ルールとプレイヤーのインタラクションがシンプルなゲームほどVR化した時の遊びをイメージしやすいと思います。そういった観点でみると、「8番出口」はまさにVR化に向いているゲームだと思いますね。

――こういったSteamなどで人気のインディーゲームがVR版になることは話題になりやすい現象だと思います。今後もこういった施策は考えられていますでしょうか?

ユナ・マチュー:
そうですね。海外でも「Flat2VR Studios(※)」という会社が始まりましたし、ビジネス的にはこういう機会が増えたらいいなと思っています。VRと相性が良さそうであれば、新規ユーザーも増えますし、既存ユーザーも再挑戦できますので、Win-Winになりそうです。

※Flat2VR Studios……過去にリリースされた通常のゲームを、ライセンス取得してVR化移植するゲームスタジオ。有志MODコミュニティから誕生した。

何がどう変わったのか、試してみてほしい


――「8番出口」はファンが多く、VTuberやストリーマーが遊んでいる印象があります。初めての方や遊んでいる方に、どういったところを体験してほしいのかお聞きしたいです。

ユナ・マチュー:
今までプレイしていただいた人は、VRだけのサプライズもあるので、それを探しながら楽しんでいただきたいと思っています。まだ遊んでいなかったという方にも、VR版「8番出口」の体験から、その魅力が伝われば嬉しいですね。

2週間ほど前に、「四畳半MIYASHITA PARK」というMetaの公式体験イベントが渋谷で開催されたのですが、そのなかで初めて「8番出口」の体験版を遊ばれる方々が多く見られました。とても良い雰囲気で遊ばれていたのが印象的でしたね。そこまで怖いゲームでもありませんし、複雑な操作が必要もないことから、面白さを体験してもらいやすかったのだと思います。

――VRゲームの中でも実況しやすいタイトルではないかとも思います。

ユナ・マチュー:
そうですね。ゲーム実況であれば、プレイヤーの自然なリアクションが視聴者にも伝わりますし、コンセプトの理解も早いのではないかと思います。弊社としては、国内のインフルエンサーの方々にこのゲームを広く遊んでもらえるようにやっていきたいですね。色々と企画を考えている最中ですので、お楽しみにお待ちくだされば幸いです。

――ありがとうございました。

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