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テック 2024.06.30

【体験レポ】落としても壊れないARグラス。要素技術メーカーDigiLensの自信作「ARGO」

世界最大のXR業界カンファレンス「AWE USA 2024」には、世界中から様々なハードウェアやプラットフォーム、クリエイターが集まっている。その中でも注目を集めていたのは、やはりハードウェア。現地でしか体験できないブースは常に活況だった。

すでにNTTコノキューが発売するARグラスのレポートをお送りしたが、本記事では会場で見かけた、とあるARデバイスも紹介したい。米国のスタートアップDigiLensが開発しているARグラス「ARGO」だ。

産業の現場に向き合って生まれたARグラス

「ARGO」は、産業利用に特化した一体型のARグラス。PCやスマートフォンなどとの接続は行わずに単体動作するし、バッテリーも内蔵されている。形状こそややガッチリとしているが、「ふつうの眼鏡型」だ。


(DigiLensの「ARGO」。クアルコムのチップ「Snapdragon XR2」を採用しカメラも搭載、いわゆる「6DoF」のトラッキングを実現。ディスプレイはウェーブガイド方式を採用している。展示スタッフいわく「いよいよ出荷直前」とのこと。 撮影: すんくぼ)

実際に装着をしてみると、重さはあまり気にならず、かなり軽く感じる。そしてレンズが大きいが、これは視野角が広いという意味ではない(ARGOの視野角は30度だ)。「ちゃんとメガネとして使えるよう、レンズが大きめに設計されている」のだ。

ARGOは産業での利用に特化していることもあり、現場のニーズに向き合いながらデザインを整えてきている。例えば「堅牢性」。取り外しの回数が増えれば、当然落としてしまうこともありえる。軽さだけを意識したデザインは使いやすいかもしれないが、同時に壊れやすくもなってしまう。ARGOでは堅牢性の高いフレームと割れにくいレンズを採用し、「落としても安全」にしているようだ。

フレキシブルな設計を可能にするコア技術

産業向けのニーズを満たすデバイスづくりは、決して容易ではない。複数の部品メーカーが連携し、様々な要件や製造プロセスの課題を解決する必要がある。

DigiLensはこの点で、他のARグラスメーカーにない「強み」を持っている。彼らはもともと、ARグラス向けの主要な光学技術「ウェーブガイド」を開発・製造している会社なのだ。最初のビジネスの柱はそのライセンス提供であり、いまも世界中の企業に向けて続けている。


(DigiLensは2021年、企業向けのリファレンスモデル「Design v1」を発表した。これがのちに「ARGO」につながったものと思われる)

様々な現場や企業のニーズに合わせ、要素技術レベルで調整を行えるというのは大きな強みだろう。ARGOは2023年の発表以来、米国の上場企業を含む多数の企業から問い合わせを受けているそうだ。

産業の現場に向き合って生まれたARグラス

さて、AWEのブースではいくつかの基本的なデモが展示されていた。操作は音声操作が基本。音声でアプリを呼び出し、ARでよくある情報表示や、操作方法ガイド、QRコード経由で3Dモデルを表示するなどの基本的な体験ができた。カメラを活かし、現場作業者が現地の様子を撮影することも可能であり、カメラにはズーム機能つきだ。


(ARGOの主な機能を書き出した図。フルカラーカメラ、マイクとスピーカー、バッテリーなどを搭載。もちろんWi-Fi 6EやBlueTooth対応も行われている)

DigiLensのスタッフいわく、「ARGO向けのアプリケーションは、基本的なもの以外はそれぞれのユースケースに合わせて開発することになる」とのこと。なお、プラットフォームはクアルコムの「Snapdragon Spaces」を採用している。すでにARのソリューションソフトウェアは多く存在するが、ARGOに対応するかどうかは各企業に委ねられている。

なお、AWEの時点でDigiLensはGoogleの生成AI「Gemini」の統合も発表。残念ながらデモでは体験できなかったのだが、Metaのスマートグラス「Ray-ban Meta」の「Meta AI」のように、ナビゲーション機能を強化するほか、「定型的な音声認識を超えた、自然言語での会話を可能にする」とのこと。やはりARグラスは、ソフトウェアを含めた使い勝手の良さが今後の鍵を握りそうだ。

ARGOの日本展開は現時点で未定。とはいえ、彼らのデバイスが搭載する機能やそのユースケースは、国内ハードウェア・ソフトウェア企業双方にとって大いに参考になることだろう。今後の動向にも注目したいところだ。

(了)

(参考)DigiLens


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